髪を乾かす際に使うドライヤー。スタイリングで使うアイロンやコテ。
これらの共通点は『熱を使う』ということです。
毛髪はケラチンというタンパク質から構成されていて、このケラチンは熱に強いです。
でも「熱に強いから安心だ」と安心して間違った熱の使い方をしていると、取り返しのつかないダメージを負ってしまいます。
今回は、『正しい熱の使い方』と『熱によるダメージ』について書いていきます。
熱によるダメージ『熱変性』について
まず毛髪成分の簡単な割合です。
毛髪のほとんどがタンパク質でできています。
熱によるダメージは、このタンパク質が熱によって変化してしまうことによって起こります。
分かりやすい例として、同じタンパク質である卵の白身を挙げます。
みさなん目玉焼きや茹で卵を見たことあると思います。フライパンで焼いたり茹でたりと熱を加えることで、白身は白く固まって変化します。これが熱変性です。
白身と同じことが毛髪でも起こるわけです。
海外の研究で、固まったタンパク質を元に戻す実験に成功していますが、一般人が行うには現実的ではありません。
熱変性によるダメージの影響
- カラーの際に色味がくすむ(緑色っぽくなる)
- カラーの色味が入りづらい(染まりづらい)
- カラーで明るくなりづらい
- パーマがかかりづらい
- パーマを無理やりかけるとチリチリの毛になる
- 毛髪が固くなる(手触りといった質感が変わる)
- 枝毛になりやすい
はい。いいことは一つもありません。
さらに厄介なのが、熱変性した毛髪は部分的にあることが多く美容師泣かせでもあります。
なぜ部分的にあることが多いのかというと、アイロンやコテを部分的に使うことが多いからです。
前髪だけアイロンしている方もいれば、肩下の毛先だけをコテで巻いたり。後頭部辺りはアイロンをしないでサイドや表面だけの方もいます。
例えば、前髪だけアイロンを毎日していて熱変性した毛髪になっていたとします。
この方が全体のカラーをした際に、前髪だけカラーの入りや発色がおかしくなるといった現象が起きます。
私の経験上、若い女性(特に高校生)に熱ダメージが多い傾向がありました。
熱変性は何度から起きる?
髪が濡れているか乾いているかで変わってきます。
アイロンやコテは温度設定が付いていますので、事前に温度を知ることができます。アイロンは140~200℃、コテが100~200℃位の商品が多いです。
ドライヤーは吹き出し口近くで100~120℃と設定されていることが多いです。吹き出し口からの距離で温度も変わってきます。
お気づきでしょうか?
アイロンなどを使った場合、熱変性をほぼ防ぎようがありません。
カラーやパーマと同じで、アイロンなどで作り上げるスタイルは毛髪ダメージと引き換えに手に入れるものなのです。
全くのダメージ無しで行うことは不可能です。割り切ってください。
でも、ドライヤーやアイロン、コテで髪を飾りたいですよね?
次は、ダメージを最小限に抑えて、毛髪が長持ちする使用法を説明します。
熱によるダメージを最小限に抑える方法を覚えよう
熱の間違った使い方をすると数回で毛髪がダメになります。寿命がマッハです。
ここで紹介するのは、数回を100回1000回と使ってやっとダメになる方法です。
例えるなら、卵の白身を高火力で一気に固める(数日でダメになる使い方)のではなく、低温でゆっくりゆっくり固める(100回1000回でダメになる使い方)方法ということです。
ベストとしては温泉卵になったくらいでカットで切り落とすくらいのスピードです。
上でも書きましたが、熱ダメージを与えずに行うのは不可能です。※ドライヤーで乾かす際は可能。ドライヤーの説明時に詳しく書きます
そして髪の毛は伸びます。平均で一ヶ月に1~1.2㎝伸びます。一年で13㎝以上です。
寿命を延ばせば毛髪がダメダメになる前に切ることができます。
熱で髪の毛に癖がつく原理
ドライヤーやアイロンの使いかたを知る前に、まず熱で癖がつく原理を知っておきましょう。
結論から書くと毛髪内の『水素結合』が熱(大体40~60℃)で切れて、冷えたときにくっつくからです。
毛髪には四つの結合があり、この結合がくっ付いたときに癖となって現れます。パーマはこの結合のひとつである『シスチン結合』を薬品で切ってくっ付ける技術です。
結合について詳しく書いた記事もありますので、気になる方はこちらもどうぞ。
水素結合は水分や熱で切れやすく、冷えたり乾いたりするとくっ付くという特徴があります。スタイリングをする際に100%関わってくる結合です。
身近な水素結合は、洗濯物です。くちゃくちゃのまま干せば、くちゃくちゃにシワが付いて乾きます。逆に、キパっとシワを伸ばしたまま乾かせばキパっとしたまま乾きます。
シワを伸ばすときは、衣類用のアイロンを使いますよね。頑固なシワはスチーム(水)アイロン(熱)で伸ばせます。これは、衣類の繊維にある水素結合をスチーム(水)で切って、さらにアイロン(熱)でも切っているからです、切れた結合は空気で冷えて(またはアイロンによる水分の蒸発)再結合します。
湿度が高いときに髪が膨らむ。巻いた髪が雨で取れる。など、これらは水によって水素結合が切れたことによる現象です。
長くなってしまいましたが、覚えて欲しいのは『濡れているor熱で切れて』『乾いたときor冷えたときにくっ付く』ということです。
『濡れているor熱いとき』に形を自由に決めて。『乾くor冷めるとき』に決めた形で癖がつく。という感じです。
ドライヤーの使い方
髪を乾かすときやブローをするときに使うドライヤー。吹き出し口で100~120℃です。
濡れているときは80℃から熱変性の危険があるので、距離を離して風の温度を下げるというのがポイントです。
注意点としては
- 近距離で長時間熱風を当てない
- 乾かすので使用する際は、熱で乾かすのではなく、風で乾かすという意識を持つ
です。
スタイリングで使うときは、上記で説明した水素結合のことを思い出してください。
『水分or熱で切れて』『冷えたときor乾いたときにくっ付く』です。
ポイントは乾いていくときor冷えるときにつけたい癖を維持するということです。さらに、髪の毛は少し湿ってるくらいで行ってください。
ストレートにしたいのであれば、乾いていくときor冷えるときまでブラシや手で引っ張った状態を維持する。
ロールブラシやカーラーでカールをつけるのであれば、巻いたまま軽く温めて、乾いていくときor冷えるまで維持する。
メンズのスタイリングで、トップにボリュームを出したいときは、トップを少し温めてから握ります。そして、握ったまま少し冷えるまで待つか、冷風を当てるとボリュームが出ます。レディースのエアリー感を出すときもこの方法がかなり使えます。
ドライヤーには冷風機能が付いていると思います。この冷風機能を上手く使うと簡単に冷やすことができます。これが本来の冷風機能の意味だと思います。暑いときの扇風機代わりだけではないんです。
極論で言えば、冷風のみでスタイリングすることも可能です。冷風でも乾くので、湿っている状態(水素結合が切れている)から乾かす(水素結合がくっ付く)だけでも癖はつけることが可能です。これが、ドライヤーのみに与えられた熱ダメージを与えない方法です。
ブラシ一体型のくるくるドライヤーは、接触部分が高温になりやすいので注意してください。冷風機能を上手く使って最小限のダメージに抑えましょう。
アイロン、コテの使い方
高温なため一番注意して使わないといけない道具です。最悪の場合熱変性の究極状態である炭化(炭になる)で毛髪が焦げてしまい、その部分から千切れてしまいます。
使う際の注意点を挙げておきます。
- 必ず完全に乾かしてから使用する。必ずです。念を押します。必ず完全に乾かしてから!
- 同じ部分に一秒以上あてない
- 温度設定で最も低い温度にして使う
- 毛髪自体が高温になるので火傷に注意する
熱変性の温度は
です。
アイロンで毛髪を挟んだときに湯気がフワッと出た経験はありませんか? もしくは挟んだ瞬間に『ジュ』という音。
これは毛髪が完全に乾いていないため、毛髪に付着している水分がアイロンやコテによって蒸発した証拠です。イコール、熱変性しています。水の沸点は100℃です。濡れているときの熱変性する温度は80℃からです。
必ず完全に乾かしてから使用しましょう。
アイロンやコテ商品の謳い文句として「プロ仕様のMax220℃」などあると思います。高温を謳い文句にしているから高温が良いわけではありません。
これは、あくまで『高温だからスタイリングに時間がかからないよ! すぐに癖が伸びるよ!』という意味です。
水素結合を理解していれば高温にほとんど意味がないということに気付いているはずです。
「高温に設定しないと癖が伸びない!」という人は、アイロンで温められた毛髪を冷めるまでの間維持していないからです。
維持する方法は、引っ張るということです。毛先を伸ばす場合は火傷をしないように、歯の密なコーム(櫛)を使うとテンションをかけ続けることができます。
毛先をやる際に、間違ってもアイロンで挟んで引っ張るということはやめましょう。
コテの場合は、巻いた毛をすぐ重力にゆだねるのではなく、冷めるまでのあいだ支えるなどして形を維持しましょう。その際は火傷に注意してください。
これらの方法は低温かつ毛髪が熱に触れている時間が少なくなります。
熱変性してしまった毛髪はどうすればいいの?
元に戻すことはできないと考えてください。
なので、毛髪をしっとりと柔らかくするようなトリートメントなどで誤魔化すしか方法はありません。
こうならないためにも熱と上手に付き合っていきましょう。
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